2012年8月10日金曜日

Modern Architecture in Shanghai / 近代建築散歩 上海・旧アスター・ハウス・ホテル

旧アスター・ハウス・ホテル(1909)

旧アスター・ハウス・ホテルのロビー・インテリア
(Japanese)


この建物は、1906年に竣工された、嘗て、上海で一番豪華なホテルといわれた、アスター・ハウス・ホテルである。

アスター・ハウス・ホテルは、1923年に売りに出された。買ったのは、Hong Kong Hotels LTD.だ。同社は、このホテルを買ったと同時に、社名を、Hong Kong and Shanghai Hotels LTD.に変更している。

Hong Kong and Shanghai Hotels LTD.は、上海で大成功を収めた幾つかのユダヤ人一族の内の一人、カドゥーリ一族である。Sir Ellis Kadoorieは、1880年、既に上海で成功を収めていたユダヤ人一族である、David Sassoon & Companyで働く為、上海を訪れた。ガドゥーリは、サッスーン社で我武者羅に働き、稼いだ500米ドルを元手に独立、ここ上海で、カドゥーリ王国を築き上げた。

元々上海一豪華だったこのホテルは、カドゥーリ一族により、更に格を上げた。上海で最初の電灯、電話機、トーキー映画館を備えたのはこのアスター・ハウス・ホテルである。単に豪華なだけではない。サービスも一流だった。ある日、ホテルのベルボーイが宿泊客の財布を拾い、無事に届けた。お礼として中身の1/3をもらったそのベルボーイは、それを元手にタクシー会社を設立、今日の強生タクシーである。

上海に来た著名人は、当時、皆、このホテルに泊まった。哲学者、バートランド・ラッセル、アインシュタイン、チャップリン。チャップリンは、2度もここを訪れている。2度目は新婚旅行だった。

戦争により、このホテルは日本軍の管理となった。戦後、上海で栄華を極めたカドゥーリ一族は、上海を引き上げ香港に渡る。このホテルも他の人に渡った。

しかし、55年の時を経て、カドゥーリ一族は、創業の地、ここ上海に戻ってきた。2009年に、ここ外灘にペニンシュラ・ホテルをオープンさせたのだ。55年間、上海から離れていたにも関わらず、社名から、Shanghaiを取らなかったのは、絶対にこの地にカムバックしてみせるという思いからだったのかもしれない。

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